どつぷり首まで浸かつてしまい 僕は 何処にもいけません
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ミドリさん15才は 僕んちの近所に住んでいる親類の娘さんです。 僕 今日は仕事が休みであったので ミドリさんちに手土産もって 遊びに行ったのです。 遊びに行った ってのは名目上に便宜的。 本当は ミドリさんに謝りに行ったのですよ。 こないだ 本当ならば休みの日 ミドリさんと水族館に行く約束をしていたのでありましたが急に入った仕事の都合のため どうしても休むことかなわず結果的にすっぽかしてしまい。 以来 ミドリさんから口をきいてもらえないのであります。 ここは早めに手をうっとかないとなあ と ミドリさんの大好物 毛蟹を手土産でここはどうぞひとつ よろしくおねがいしたい。 緊張顔でドアのチャイム お出迎えはミドリさんで(今日はミドリさんが一人で留守番ってのは事前にリサーチ済みでありますよ) 何の話も聞かれずに追い返されるかもと危惧しておりましたが 「ふん あがったら?」 とミドリさん 自分の部屋まで通してくれて。 やあ これは幸先がいい 部屋まで上がったらこっちのものです 「で 何の用?」 え あ すいません こないだ 不本意とはいえ約束をやぶってしまって。 あんなに水族館 楽しみにしてたってのに 「本当に。 わたし 白熊が見たかったのに。 楽しみにしてたのに」 ごめんなさい 今度は 必ず 絶対 休みを取るから 一緒に水族館に行きましょうよ そして白熊をみましょう あ あの これ お詫びといってはなんですが ミドリさん 毛蟹 好きでしたよね 贔屓の魚屋さんでいい毛蟹を仕入れたからって ちょいと買ってきたんですけれど 一緒に食べません? 「わあ ちょうどよかった わたしも 佐々木(仮名)さんに贈り物があるのよ」 お 贈り物? わあ なんだろう うれしいなあ 「はい これ。 どんなふうに使おうかって考えあぐねてたんだけど 蟹を食べるときに使うのが 一番のベストチョイスだって 今 思い至ったわ」 え なんですか? これ 「うん。 裏ルートで闇オークションに流れていたのを わたし 手に入れたんだけれどね。 ちょっと 手にはめてみて」 手にはめるって これ 剣道の籠手じゃあ ないですか 「うん。 とある高校の剣道部で 代々代々使われ続けてきた 部室に備え置きの籠手よ」 それを はめろってんですか? はめてたら 蟹を食べれませんよ 「いいから。 黙って はめる」 う うん。 うわあ なんか ぬるぬるしてる 「何代にもわたって剣道部員の汗がしみ込んだ籠手だもの。 一度も日干しとかしてない 黴臭と酢酸臭の塊だもの。 ぬるぬるするのは当たり前だわ」 ひぃ! 手が 手が痒くなって! 手が痒くなってる! 外してもいいですか?! 「だめよ。 さあ これからどうでもいいお話を ちょっとしましょうよ」 (中略 30分経過) …でね その男はクラスの女全員とキスしたことがあるっていうんだ。 まあ よくよくきいたら全部が間接キッスで それも縦笛を介入したいわゆる笛舐めだったってわけさ 「ふーん まあ そんなことはどうだっていいんだけれどね。 さてと そろそろ頃合ね 佐々木(仮名)さんの持ってきた蟹 食べましょうよ。 食べ終わったら 次の休みの日の予定を立てようよ 水族館にも行きたいし もっと面白いこと いっぱいしようよ」 え あ うん そうですね 楽しいことを たくさんしましょうよ。 ああ よかった。 ミドリさん 約束をすっぽかした僕を 許してくれるんですね 「ふふふふ。 そうだ じゃあ さっさとその籠手 外しなさいよ 外さないと 蟹 食べれないよ?」 ああ よかった さっきから 手がむずむずして仕方がなかったんです …うわ 手が すごく臭い! 何だこれ! 糸を引いてる! 「剣道の籠手をつけた後ってのは そういうものなのよ」 と とりあえず 手を洗ってきます こんな臭いのついた手は どうも 「誰が手を洗っていいッつッた」 え ミドリさん こんな臭い手で 蟹なんか食べられませんよ? 「そのままだ。 その臭い手のままで蟹を食えばいいんですよ 佐々木(仮名)さんは」 うええ せっかくのおいしい蟹なのに 「その臭いつきの素手で この蟹 むしゃぶりつけばいい 全部食べたら 約束すっぽかしたこと 許してあげてもいいけれど」 なんてミドリさん 自分の分の毛蟹を寄せて 僕に残りの毛蟹をごっそり押し付けました うええ こんな臭いの手で 食べられるわけがないよ 「さっさと食わないと 容赦しないよ」 どうやらミドリさん 僕を許す気などさらさらないようです。 #
by khem_mark
| 2005-07-05 15:57
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今日も仕事が遅くに終わり 自室に帰ってこれたのは 真っ暗 真っ黒 真夜中で。 玄関開けて 部屋の中は真っ暗く ただいま なんて独り語ちても返答なんてある訳ないし 今宵も侘しく寝るためだけに帰ってきましたよ。 ああ さっさとシャワーを浴びて そのあとは冷えた缶ビールをグイグイ一気飲んで すべるように眠りにつこうと思うよ。 とりあえず 部屋の明かりを点けようか。 真っ暗い中 躓かないようゆっくり進み 部屋の真ん中 明かりスイッチの引っ張り紐が垂れ下がってる大体の位置 手伸ばし 手探り 指先当たり あった 引っ張り紐 掴んでグイっと引っ張った 『いたっ』 いたっ? なにが? つうか 誰が? 女の人の声 ってことは僕じゃない じゃあ 誰だ この真っ暗い部屋の中 僕以外に誰か居る? うわあ! 僕 ビックリして 掴んだ電灯スイッチの引っ張り紐 グイグイ何度も引っ張ったけれども 明かりが点かず 真っ暗いまま。 更には 知らない女の人の声 『いたっ! いたっ!』 が繰り返し聞こえてきます うひぃ いたって 何がいたんだよう 立て続けに紐をグイグイ引っ張ってると ブツリ 音がして紐が抜けました わあ 壊れた! 『ぎゃッ!!!!』 うひゃあああ! 知らない女の人の声がひときわ大きく聞こえ 僕 思わず悲鳴を上げて 手を振り回すと 手に当たったのは 電灯の引っ張り紐の感触 あれ? さっき引っこ抜けたはずなのに なんで? と思いつつ 手に触れた引っ張り紐 掴んで引っ張るとカチリ 何の支障もなく明かりが点いて。 ありゃ どうしてだ? いや そんなことより声の主 僕の部屋の中にいた誰かは何処に行った さっきの声は ごく近くから聞こえてきたぞ 何処だ どこにいる 僕 部屋中隅々を見渡したけれど 僕以外に誰もいず 押入れとか風呂場トイレなんかを覗いたけれど 誰もいず この部屋の中 最初ッから僕以外誰もいなかったんじゃないかって思えるくらいでありましたが。 断じてそんなことはありません さっき 確かに 女の人の声を聞いたのです。 僕のすぐ近く 僕の知らない女の人が 確かに存在したのです。 それの証拠に 僕の手の中 さっき引っこ抜いた電灯の引っ張り紐 と思い込んでたモノ 握りこんでいたのは 艶やかに黒くて妖しく長い 女の人のものと思われる 髪の毛が一筋。 #
by khem_mark
| 2005-07-02 04:45
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出張で 何日か前から遠い他県にお出かけ中の彼女からお電話がありまして。 僕 受話器の向こう 彼女に云いました。 ああ そう云えば どうでもいい話なんだけれども 昨日のお昼時 君のことを見たよ 街の 横断歩道のところで。 もちろん 君が出張中で 昨日 この街にいないことは 知ってるよ 日帰りできるような距離じゃない 遠い遠い場所にいるはずの君が 昨日 この街 あの場所にいるわけがない だとしたら ただ単に 君によく似た人をみただけだったのかもしれないし 見間違いだったのかもしれない けれど 僕は アレは 君だったと断言できる 僕は 君をみた。 僕が 他の誰かと君を見間違えるわけがない 見覚えのある 君がお気に入りだって云ってたプリーツスカート 昨日 着ていたね あの柄 よく憶えているよ でも ビックリしたよ 昨日 君がいた場所 明らかに物理法則を無視していた 横断歩道の上空10メートル さかさまになって静止 僕のことを ジッと見ていたね 僕は 自分の目を疑ったよ 僕が君のことを思いすぎて とうとう君のマボロシを視るまでになったか と。 けれども 僕の目だけに視える僕だけのマボロシって訳じゃあなかった 僕の他にも 空中で静止してる君のこと 視えた人もいた 僕とその人は二人して ポカンと呆気にとられつつ 君のことを視ていたよ まあ 君が横断歩道の上空にいたのは30秒かそこら まばたきした間に 消えてなくなってたよ。 アレは一体 なんだったんだろうねえ 君 身におぼえはあるかい? 受話器の向こう 彼女が云いました。 『ああ それはきっと 私の生霊なんだと思う』 生霊? 『うん。 あなたの事を思って想って思念いすぎて 私の身体からぬけだした 心の一欠けら』 あ ああ そりゃ ありがとう 『昨日のお昼時だって云ったわねえ うん 憶えてる。 私 お昼を食べてたら 急に あなたの事が頭の中 はっきり見えた 遠眼鏡で覗いたみたく はっきり。 私の生霊が あなたの事を視たせいだと思うよ』 うえ そ そうですか 『聞いた話によると 生霊ってのは その人を思う力が強いほど はっきり出てくるようなのよ その人を愛しいと思うにせよ 殺したいほど憎いと思うにせよ。 愛と憎は同一感情の両極端だって云うけれど 本当の事ねえ』 え 何の話ですか 『昨日の私の生霊は あなたを愛しいと思うあまりに発現。 今の私の生霊は あなたを憎いと思うあまりに発動。 今 あなたの後姿が はっきりと頭の中に見えるわ』 だから なんの 「『あなた 昨日 横断歩道のところで 誰と一緒にいたの? あんなに楽しそうに 腕なんか組んでイチャイチャしちゃって 私以外の女と ああ憎い 殺してやろうかしら』」 受話器の向こうと僕の真後ろ 彼女の音声 ステレオに聞こえ(溶暗) #
by khem_mark
| 2005-06-26 14:36
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泣かないで 泣かないで 君が泣くと 僕が悲しい 泣かないで 泣かないで 君のそばに居るから 僕が たいして何もできないけれど いつだって 君のそばに居る 何があろうと僕は ずっと 君のそばに 居ることができる 君が誰からも親切にされなくて 誰からも酷い仕打ちを受けるようなときにだって 僕は 君に少しだけ優しい たとえ君が 世界中の人から忌み嫌われて あらゆる関係が断絶したとしても 僕がいるから 君のそばに 君が生きとし生きる全てのものの厄災の根源だったとしても 最悪の根源だったとしても 僕には関係ない 君と一緒 君が死ぬまで 離れない。 君がもし 今しもヴァニラ・アイスのスタンド『クリーム』に呑み込まれて死亡する寸前のモハメドアブドゥルだったとしても 僕は なんの躊躇いも無く 君と一緒に呑み込まれるよ 亜空間に。 今じゃあたいして役に立たない 木偶の坊の僕だけど ほとんど何も出来ない無能の出来損ないみたいな僕だけれど 君のそばにいることだけは 出来る 君の後ろに ピッタリと 立っていることだけは 出来る。 だから 泣かないで 泣かないで 僕の墓の前で 泣かないで。 そんなお墓の土の中 僕はいない 土の中にあるのは 精々が僕の痕跡 かつて僕であったものの 焼けて焦げて灰燼のカルシューム 僕のお墓に 僕の魂は いない だから 僕の為に これ以上 泣くのはやめて 僕がいるから 君の後ろに。 ああ でも君が 僕に気付けないのなら 君の後ろに立って憑いている僕に気付けないというのなら 僕は 君に姿をあらわすことが 出来る 君が 二度と僕に逢えないと思ってて 寂しいと感じているのなら 僕は 君に姿を見せる事が 出来る 出来るんだ いいかい 君に 僕の姿を見せる事が出来るんだよ。 ほら 泣きじゃくる君が それでも涙を拭いて立ちあがり 僕のお墓に最後の一瞥 クルリと振り返った君に 僕の姿を。 君 最初 きょとんとして 何がなんだか わからなかったみたいだね でも ゆっくり 僕の全身をみて ひゅっと息 呑みこんだね ほら 泣き止んだ ああ 泣き止んだけれど 君 絶叫したね 途切れる事のない悲鳴をあげ続けたね そりゃあ 急行列車に轢かれてブツギリ微塵粉砕されて 人の形をしていない僕の身体を見たら 女の子なら悲鳴をあげるだろうさね でも そんなに 叫ばないで 叫ばないで。 君が 今の僕の姿を見て嫌悪に絶叫するのなら 僕は 君が死ぬまで #
by khem_mark
| 2005-06-17 15:16
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by khem_mark
| 2005-06-14 01:50
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