どつぷり首まで浸かつてしまい 僕は 何処にもいけません
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「大分 昔のことよ。 約束の時間に遅れそうなものだったから 赤信号を無視して 自転車で道路を渡ったことがあったんだ」 と 彼女が云いました。 「その日の夜のことだよ。 あたしの 死んだお祖父さんが夢に出てきた。 『お前 今日危ないことをしただろう 死ぬところだったぞ 俺が代わりに死んでおいた 以後気をつけろ』ってな具合にね」 へえ 死んだお祖父さんがねえ。 孫思いの 素敵なお祖父さんじゃないですか 「うん 本当に。 でも あたし それが本当なのか 確かめたかった。 もしかしたら その夢枕にたったお祖父さんってのは私の見た夢でしかなく ただの妄想なのかもしれないじゃない だから もう一度 自転車で 赤信号を無視してみたの それも かなり際どいタイミング でね」 あ 危ないじゃないですか 「うん 本当に危なかった。 死ぬところだった もうちょっと道路を横切るのが遅かったら 背中を後押しされる感覚が無かったら ダンプに轢かれてペッチャンコ だったわねえ」 背中を後押し? 「そう。 トンって 押される感じ。 ギュンって急加速した。 その夜の夢に やっぱりお祖父さんが出てきたよ。 『危ないなあ また 俺が代わりに死んでおいた』 って。 やっぱり 私の妄想なんかじゃなくて 本当にお祖父さんが あたしを守ってくれたんだ」 何度も助けてくれるお祖父さんに 感謝しなきゃだめですよ 「感謝なら してるわよ。 アレから 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も あたしの身代わりに 死んでくれてるんだから」 はあ? な 何度も何度も何度もって 何度ですか 「数え切れないくらい よ。 あの時からあたし 死に際ギリギリ限界のスリルっていうの? それに病み付きになっちゃって。 自分の命を試すようなこと それこそ毎日やってたわ。 そして 死にそうな目にあうたびにお祖父さんが夢にでてきて『俺が代わりに死んでおいた』って」 うわあ 最低だ 「最低ってなによ。 もう死んでるんだから 何度死んだところで お祖父さんにとっちゃ一回死ぬのも何百回死ぬのも 同じような… まあ 同じじゃなかったんだけれど」 同じじゃ ない? 「一度 身代わりになる度 お祖父さん 何処かが壊れていくの。 死んで壊れて死んで壊れて死んで壊れて死んで壊れて死んで壊れて死んで壊れて死んで壊れて死んで壊れて死んで壊れて死んで壊れて もう 壊れてないところがないくらい。 それでもあたしの身代わりになって死んでくれるんだけれど もう 限界かもしれない。 こないだ夢枕にたたれたときは お祖父さんかどうかも分からない ズタ袋みたいな肉塊が 途切れ途切れの呻き声を上げてて あたし 気持ち悪くて 叫びながら目覚めちゃったわよ」 なんてことを 「だから そろそろ お祖父さんの身代わりが必要なのよ あたしの身代わりに死んでくれる お祖父さんの代替品。 前に『死んでも君のことが好きだ』って云ってくれたアナタなんか 最適だと思わない ねえ?」 と 彼女 銀のナイフで僕の咽笛をサクリ
by khem_mark
| 2005-05-13 01:01
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