どつぷり首まで浸かつてしまい 僕は 何処にもいけません
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僕の近所に住んでいる親類の娘さんであるところのミドリさん14才から借りてた本を返そうとミドリさん宅にお邪魔しようと玄関チャイムを鳴らそうと致しましたところ 触れてもないのに玄関ドアがガチャリと開き 顔を出しましたるは白髪頭のおじいさんで ありゃ こんなおじいさん ミドリさん家にいたっけかなあ? などと小首を傾げる僕におじいさん ヒョイと一礼 そのまま僕の横を通り抜けて出ていって 刹那 おじいさんから妙な違和感をおぼえたけれども 呼び止めてまじまじ見るのも不躾であるから まあ僕の気のせいであると思うことにしたのでありますが。 改めて玄関チャイムを鳴らし 出てきたミドリさんにお迎えされて リビング通され紅茶でもてなされ へえ今日はミドリさん独りでお留守番なんだ ふひひ などと 近況話などに花を咲かせているうちに 先ほどのおじいさんの話になりまして。 さっき 玄関から出てったおじいさんって 誰です? 「さあ 私の知らない人ですよ?」 や 知らない人って そんな人を ミドリさん 独りの時に家に上げたらダメですよ 「でも 『昔 ウチの家に縁があった』って云ってたし うちの死んだお祖父さんのこと よく知ってたみたいだし。 でも お祖父さんが死んだってことは知らなかったみたいだけれど」 ふうん。 で あのおじいさん 何しに来たんです 「んっとねえ 『昔の借りを返しにきた』って コレ 封筒と木の小箱 置いてった。 仏前にでも上げてくれって云って」 中身はなんでした? 「まだ見てないよ 一人でみるのもアレだから お母さんが帰ってくるまで待とうと思ってたけど 佐々木(仮名)さんが来てくれたから丁度いいや 一緒に見てみようよ 開けて開けて」 と ミドリさん 僕に封筒と木の小箱を押し付けてきて。 ミドリさん 自分で開けたらいいじゃないですか 「変なの入ってたらイヤじゃん。 だって あのおじいさん なんか変な感じしたから おかしなモノ 入ってるかもしれないし」 うん 僕も あのおじいさんに変な違和感があったんだけど なんだろうね 「なんか ラーメンマンぽかったし」 ラーメンマン って キン肉マンの? 闘将!で美来斗利な? 「うん それ。 似てなかった?」 全く似てませんよ。 さっきのおじいさんの 何処がラーメンマンですか 「えっと 醸し出す雰囲気的な何かが」 弁髪でもなかったしドジョウ髭も生やしてなかったしカンフー服も着てないし どこにもラーメンマン的要素はなかったと思いますよ 「もしかしたら 服の下に 肩当てを装着していたのかも! 『闘』の文字入りの!」 装着してるわけないですよ 「うむぅ。 じゃあなんで私 ラーメンマンっぽいって思ったのかなあ」 そんなの知りませんよ。 まあとりあえず この封筒の中身から見てみましょうか どれ… うわあ 「え なに入ってたの?」 凄いですよ 万札が束で。 100万円くらいはあるかもしれない 「嘘!」 しかも珍しいことに 聖徳太子の万札ですよ 更にはピンピンの新札で 「わあ 凄い。 わたし 欲しいものがあったんだあ 助かっちゃった」 や ミドリさんが一人占めするのはどうかなあ とりあえず ミドリさんのお母さんに話をしないと。 「そんなことしたら『コレは将来の為 お母さん銀行が預かっておきます』って没収されちゃうわよ お年玉みたく!」 ま まあソレは置いておいてですよ こっちの木箱の中も見てみましょう ソッチの封筒に万札の束が入ってたのなら 木箱の中に 宝石の類が入っていてもおかしくはないです 「ダイヤとか! 凄い! お金持ちよ!」 お金持ちかどうかはともかくとして とりあえず開けてみますよ。 と 木箱の蓋を外してみますれば 中にあったのは白い綿 それに包まれ気味の何かが二つ どう見ても 宝石の類じゃあない 「なに それ」 なんでしょうねえ 一見 乾物みたい 茶色くてへろへろしてて ビーフジャーキーっぽいけれど 「ふうん でもきっとわたしには興味のないものね」 まあ そうでしょうねえ。 でもなんでしょう 一万円札の束と乾物状のコレ 何の理由があって あのおじいさん 置いていったものやら 「そんなこと どうでもいいじゃない ああ 何を買おうかしら アレも欲しいしコレも欲しいし」 などと浮かれ気味のミドリさんを横目に 僕 乾物みたいなソレを矯めつ眇めつ調べます なんだろう 萎びて縮んだ二つの何か 同じような形だけれど左右対象で 何処かで見たことのある形をしてて 結構見なれているはずなんだけれども ソレがなんだか思い出せなくて うむむむ と二つ並べて見つめていて 思い出した 何処で見たことあったか ソレが何であるか ソレがかつて 何であったか それと同時に思いが至った 僕が あのおじいさんにおぼえた違和感 ミドリさんが あのおじいさんのこと ラーメンマンみたいだって思った理由 芋蔓式に づるづる引っ張り出せた あのおじいさんには 両耳がなかった。
by khem_mark
| 2004-11-11 00:01
| ミドリさん
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