どつぷり首まで浸かつてしまい 僕は 何処にもいけません
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居酒屋 偶然隣り合った黒い服の彼と どんな切っ掛けでそんな話になったかは憶えちゃいないけれども。 彼は云いました。 「僕と彼女は愛し合っていたけれども結ばれることなくて 二人離れて別々の人生を送らなければならなくて。 もう二度と逢うこと叶わぬならば と 僕と彼女は お互いの体の一部と一部 交換し合うことにしたのです。 これなら どんなに遠く離れていても 僕は彼女を 彼女は僕を いつでも身近に感じていることが出来る」 てなことを云いながら 白手袋を嵌めた左手 彼はさも愛しそうに撫で回して。 じゃあアレですか もしかしてアナタは 彼女と 左手を交換したとでも? 「おや よくわかりましたね その通り この左手は 彼女と交換した左手でした」 そんな 僕を騙そうとしていませんか 「君を騙して 僕に何の得があるんです コレはいたって真面目な話ですよ」 でも 信じられませんよ 別々の 人間の 生身の 左手と左手を 交換ですって? そんな 凄腕のサイバネ医師でもなけりゃ無理ですよ 「無理に思えても 方法を知ってりゃどうにでもなります ほら コレを見て御覧なさい」 彼 右手で懐から取り出して僕に差し出したるは 薄っぺらくて薄汚れてて 何枚かの紙のようなものを紐で綴った代物で そりゃ なんです? 「『尸条書』って本の一部分らしいんだけれど これに 人の身体の一部分を取替える術が書かれています」 本当ですか ちょっと見せてください わあ なんて書いてあるかわからねえ 「中国の方の ずっとずっと昔の とても古い本らしいよ ほら この書いてる文の横に 訳文が書いてあるから この術を使うときは それをみるといいです。 じゃ 僕はこの辺で」 え じゃ って あの どこ行くんです コレ 忘れてますよ 「差し上げますよ 僕にはもう 必要のないモノですから」 え でも 見ず知らずの僕に 「なに ちょっとした形見分けだと思ってください」 か 形見分けだなんて そんな 縁起でもない。 「いや 文字通り 形見分けだよ 僕はもう 長くない 何故なら 彼女が 死んでしまったから」 え でも アナタはピンピンしているじゃあ ないですか その彼女が死んだところで アナタには 関係ないし 「彼女は多分 死んだ そう感じたよ ならば 僕ももうすぐで 死なねばならない」 感じたって たぶん それは気のせいですよ もっと人生前向きに考えないと ねえ 「この腐り具合からして 彼女が死んでから 一週間ってところです」 と 彼 白手袋を外し まだらに緑色く変色した左手を見せてくれた。
by khem_mark
| 2004-09-10 00:59
| 怪
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