どつぷり首まで浸かつてしまい 僕は 何処にもいけません
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近所に住んでるミドリさんは 僕の親戚筋にあたる 13才の娘さんです。 以前はとっても陽気で活発な娘さんであったのですが つい先日 自動車に当て逃げ事故をされてしまい 以来 どうも尋常ではないのです 怪我はしたものの 命に別状はなかったのですが 頭の当たり所が悪かったらしくって 以前の活発であった様子は何処へやら すっかり陰気な感じになってしまい 声をかけても上の空 沼の水が澄んだときみたいな色の瞳して ボンヤリしてることが多くなりました。 この前 ミドリさんちに用事があって訪問したときも ミドリさん 庭の縁側に腰掛け ボンヤリしてました この前の事故で出来た首筋の赤い傷跡をサラサラと撫で あらぬところ 虚ろな眼をしてみつめていて 声をかけた僕のことなど まるで無視であります。 そんなミドリさんではありましたが 日によっては調子のいいこともあるようで 今日 お見舞いがてらにミドリさんちを訪ねたときも 偶々そうでありました ミドリさん 前みたいに陽気な調子に 笑顔で僕をお出迎えであります。 ミドリさんの両親はお出掛け中で 一人でお留守番をしていたとの事 僕 ミドリさんに入れてもらったお茶をすすりながら 今日の調子は良さげですね でも あんまり閉じこもってばかりでいると 良くなるものも良くなりませんよ だなんて すっかり保護者気取りであります。 「はい 今日は ほんとうに 調子がよくって」 だなんて ミドリさん ニコリ笑って 着ていたワンピースの裾をめくりだしました ビックリするくらいの勢いで 着ていたワンピースをスルスルまくり上げていって 頭からスッポリ抜いて 華奢な下着姿をお披露目であります そんな いくらご両親が留守だからって云って いくら久しぶりに調子がいいからって そんな ずいぶんと挑発的だなあ フヒヒヒ 僕 なんだかドキドキしてきて お茶をガブガブ飲みます さあて これからどうしてくれよう だなんてニヤリニヤリしてると 「佐々木(仮名)さん みて これ みてよ」 ミドリさん くるりとまわって背中を見せてくれました 背の中ごろから首筋にかけて 赤黒い傷跡がミミズみたいに残っています。 「ほら こんなになってね 今日は ね この傷跡が なんだか疼くの」 そんなことを云いながらミドリさん さも愛しげに 指先で傷跡を辿ってみせます。 「まえに 佐々木(仮名)さん こんな話 してくれたけれど おぼえてる? ほら 傷痍軍人が 無くしたはずの右足の痛みを訴えるって話 神経が変な感じになって って」 ええ そんな話 したおぼえがありますよ 「わたし いま そんな感じなんです なくした筈の 身体の一部分が いま あるように感じてるんです」 でも でもですよミドリさん ミドリさんは 別に身体の一部分を無くした訳でもないし なくしてない身体の一部分があるって感じるのは ちょっと 矛盾があると思うのですが 「人にはね 脳髄が 二つ あるのよ」 なんですかミドリさん ずいぶんと 突拍子もない 「わたしにもね 脳髄が二つ あるの でもね この前の事故で 二つあるうちの一個の脳髄が 壊れちゃったの 壊れてないほうの脳髄はね 事故のとき この傷口から飛び出ていって なくなっちゃった だから普段のわたし 不便でも 壊れちゃった方の脳髄につながってるんだけれども 時々ね 飛び出ていって無くなったはずの脳髄が あるように感じるの そん時は そっちの脳髄につながって 事故に遭う前みたく はっきり 考えたりすること できるの」 み ミドリさん それは きっと 妄想ですよ 人に 脳髄が二つもあるわけありません 一個だけですよ 「お父さんもお母さんも そう云ったよ 『ミドリ お前は事故に遭ってから 頭の病気にかかったんだ だから頭のお医者さんに診てもらわなきゃいけないよ』 だなんて云って わたしを病院に連れていって お薬 たくさん飲まされて」 そ そうです お薬をたくさん飲んだら きっと 良くなりますよ 「お薬のんだらね 頭がボンヤリするの もう一個の脳髄につながってるときでも 考えられなくなるの それがヤだから お薬のんだふりして お薬いっぱいためてね それから コッソリ お父さんとお母さんに飲ませたの」 なんですって 「で ね まだ お薬 余ってたから さっきのお茶に混ぜて 佐々木(仮名)さんにも飲ませたの」 僕 ビックリして立ち上がろうとしましたが 頭がクラクラで まるで駄目であります 「お父さんもお母さんも佐々木(仮名)さんも わたしの云うこと信じないからいけないのよ 人にはね 脳髄が二つあるの ものを考えるための脳髄と その脳髄じゃあ考えてはいけないことを考えるための脳髄 わたし 前までなら 考えもしなかったこと 考えるだけでもおぞましかったこと いま 考えてるの それが 楽しくてしかたがないのよ ニヒヒ」 ミドリさん 身動きできない僕に ニコニコしながら近づいてきます ああ 僕はこれから どうなってしまうのでしょう。
by khem_mark
| 2003-05-15 02:11
| ミドリさん
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