どつぷり首まで浸かつてしまい 僕は 何処にもいけません
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僕 部屋で独り 職場の上司への呪詛を込めながら 人型に切り抜いた豆腐 ブスリブスリ 針を突き刺しているとですよ 僕の近所に住んでいる親類の娘さんであるところのミドリさん14歳が 「お母さん カレー 作りすぎたから 佐々木さん(仮名)にお裾分けしてこいって」 と 訪ねてきました。 けれども ミドリさん 部屋に入るなり 僕の顔と 山ほど針の突き刺さった人型豆腐(数十本の針が 眼と心臓の位置に集中して刺さっています)を不審げにジロジロ見比べて 「頭 大丈夫?」 なんてことを云うのです。だ 大丈夫に決まっているじゃ ないですか 心配無用であります。 「でも そんな 人型の豆腐に針を刺すなんて 頭 おかしいじゃ ないですか」 そんなことありませんよ ほら 今日は 二月八日 針供養の日ですよ? 豆腐に針を刺すのは 当たり前のことです。 「へえ 針供養 ねえ それにしては 随分と物騒な 針の刺し方。 誰か 呪ってる?」 会社の上司を呪っています だなんて答えられるわけがありません。 ここは ちょっとした豆知識を披露して 話題をそらさねば。 あー えーっと そう そういえば 知ってます? 針供養ってのは 裁縫仕事に従事していた女の人が折れた針を淡島明神って神様に納めて供養し その日は仕事も休みにしたってことが始まりらしいんです。この日に針仕事をすると 火にたたる とかも云います。そういえば この淡島明神 女性の腰から下の病に霊験があるってお話でして つ つまり せせ性病とか! ミドリさんにはまだ 関係のない話ですよねえ 「ねえ 佐々木(仮名)さん」 え あ は、はい。 「なんで 針供養は 針を 豆腐に刺すの? その 淡島明神って神様に納めるんなら 別に 豆腐に刺す必要 ないじゃないですか」 ああ それはきっと 折れた針に 今までご苦労様って意味で 軟らかい豆腐なら労なく刺さるから じゃないかなあ。 「軟らかいものは 豆腐だけじゃないですよ 普通の布とか 綿とか なんでもいいじゃないですか なのに 何で豆腐に針を刺すんです」 そ そんなこと云われても 「わたしの納得できる答え 云えなかったら 佐々木(仮名)さんの 指と爪の間 この折れ針 何十本と刺してやるんだから」 ひい! ミドリさん 目をキラキラさせて僕の手を押さえつけます 本気です 豆腐から抜き取った針でもって 僕の指先を チクチク突付いています。 ミドリさんは やるといったらやる娘です このまま 何も答えられないでいると 僕の十本の指が 大変なことに! ここは 適当なことでも云って なんとかミドリさんを言いくるめなくては。 えーっと 豆腐 豆腐 そう 豆腐…小僧 かなあ ええ 豆腐小僧 ですよ 「豆腐小僧? なにそれ」 んー っと 江戸時代に黄表紙って呼ばれてる滑稽文学本があるんですけど それに登場する 妖怪 です。 「妖怪?」 ええ その名の通り 豆腐を持った小僧の妖怪です 雨の日に 竹薮から出てきて 通行人に 持ってる豆腐を差し出すっていう なんだかよくわからないことをするんですよ。 で その豆腐を食べてしまった人は 身体中に カビが生えるそうです。 「で それが針供養に 何の関係があるのよ!」 痛い! 刺さないでください! ま まだ続きがあります その いろいろな黄表紙って本に 豆腐小僧は 登場するんですけれど 豆腐小僧にも何種類かいて 普通の子供が豆腐をもったものやら 一つ目の小僧やら 狸や河童が豆腐をもったものやらがいるんですけれど 僕がいま 針供養に関係あると思うのは 一つ目小僧が豆腐を持ったタイプの豆腐小僧 なんですよ。 「へえ それで?」 えーっと 針供養は 関西では十二月八日 関東では二月八日 に行われます この日は 事八日 っていいまして 十二月八日は事納め 二月八日は 事始め です この 事 は 祭事とか斎事を意味していまして この日は仕事を休み 家に篭って 物忌みをするって風習があります。 「で、そ・れ・が?」 痛ッ! 突付かないで! えーっと で この事八日には 一つ目小僧が来るんです。一つ目小僧は 箕借り婆 って妖怪と一緒に来るって話もあります この箕借り婆そのものが一つ目って話もありますが。 「で 一つ目小僧が 何しに来るのよ」 え 何をしに来るかは わかりませんが とにかく 事八日の日にやってくる一つ目小僧を見ると災いが降りかかるって事で この日は家に篭って外出することを避けたといいます きっとアレです 事八日で物忌みしなきゃいけないのに 家の外に出る人 やっぱりいるじゃないですか そんな人の行動抑止のためとか そんな感じで。 「じゃあ 事八日 針供養の日には 一つ目小僧が来るって ことなのね」 ええ そうです、そうです。さらに、一つ目って属性は だいたい製鉄や鍛冶に 何らかの関係があります。イッポンダタラとかが そうです 長年 溶鉄の輝きを見つづけることで片目がつぶれ タタラを踏みつづけることで 片足が萎え つまり 一つ目一本足。 針ってのは 糸を通す穴と その形から 一つ目一本足で 共通します。さらに 針は 鉄製です。 「つまり どういうことですか」 僕 もしかしたら 一つ目豆腐小僧は 針供養されなかった廃針の 付喪神 じゃあないかなあ って思うんですよ そしたら 豆腐小僧が 豆腐を差し出す訳がわかります。自分を 供養してほしいんですよ。 「じゃあ その豆腐を食べた人の身体に カビが生えるってのは?」 ああ きっと 物忌みの日になのに家の外に出るってのは きっと 遊びに出掛けるってことです 女遊びとか。 そんな時には いい着物も着たでしょうし お洒落もしていて 全身に 華美が映える。 「ああ なるほど」 何が なるほどかは知りませんが ミドリさん 押さえつけてた僕の手を離して思案げな顔です。 出任せも云ってみるものです 勢いで出任せを適当につなげたら なんとかなりました が 出鱈目もいいところで ちょっと考えられたら 穴を見つけられるに違いありません 僕の両手が空いてる今のうち ミドリさんをどうにかしなければ フヒヒヒ。 「あ でも佐々木(仮名)さん なんで 針供養に豆腐を使うのか 説明になってな…」 ミドリさん 「はい?」 ミドリさん 君の豆腐のような白い柔肌で 僕の 肉の針供養をさせてくれないか させてくれないか 「キ、キャア!」
by khem_mark
| 2004-02-08 15:44
| ミドリさん
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