|
どつぷり首まで浸かつてしまい 僕は 何処にもいけません
|
僕には双子の兄がいて、ソレは本当にどうしようもない兄がいて、兄は自分がオカシイと云うことを常にアピールしないことには他人に構って貰えないと思い込んでいるのです。自分は気が違っているから特別に扱ってもらわねばならないというポーズをとり続けているのです。 以前にも、鏡の前、女装した兄がハサミで右眼を抉り出そうと云う仕草をしているのを僕と僕の母がみつけ、僕の母が大慌てで兄を止めたことがあったのですが、今日の昼のこと、僕が兄の部屋を訪ねると、兄は鏡の前でよく切れる剃刀を手にしニヤニヤと笑っているのを僕がみつけました。 僕は兄のそういった行動が見事なまでに自分のことしか考えていない結果の行動だと知っていて、兄がソノ剃刀で自分をどうこうしようとすることがまるで無いということを知っていたので、僕は兄の事をジッと静観しています。 兄は僕が兄の行動を止めるのを今か今かとヤキモキしながら待ち焦がれていたのですが、僕はソレをジッと見ています、ホラ、出来るモノならやってみなよ。 「いいのか、俺が死んでもいいのか」と兄は云います。 兄さん、死ぬ気もない癖に、ポーズだけは一丁前だ、知っているぞ、そんなポーズを取らない事には誰からも相手にされないんだろ、兄さん、死ねるモノなら死んでみるといい。 そう云ったら兄が「うわあ!」と叫びながら剃刀を振り上げながら向かってきたので、僕は兄を両手で突き飛ばしました、兄は見事に転び洗面台の角に後頭部を強打し、しばらく白目をむいてビクビクしていましたが、やがて身動き一つしなくなりました。 死んだ。 厄介な事になりました。この際だから棄ててしまおうと思います。母には『兄が突然部屋を飛び出していなくなった』と云えばいいです、普段の兄の奇矯な行いなら十分考え得ることです、あとから捜索願を出せばいい。 グッタリした兄の身体を引きずり表に止めてた車のトランクに押し込むとカッコイイ勢いで車を発進させます。山の中にでも棄てに行こうと思います、30分ほど車で行ったトコロにいい場所があるのです。 鼻歌交じりに車を走らせます。道路が舗装されていない山道にさしかかり、そろそろ目的地に近づいて来たと思われたときです。 ガツッ ガツッ 車の後ろの方、トランクの中から物音、内側から力一杯殴りつける音がします。どうやら兄は生きていたようです。息を吹き返したようです。 ガツッ ガツッ うるさい、黙れ。僕は車を山道の路肩に停め、座席下の工具箱からスパナを取り出して車外にでると、後ろに回り込んでトランクを開けました。 兄は目を剥き出しに見開いた随分と怯えた表情をしていて、「お願い、殺さないで」と哀願しましたが、そんなこと知るか、おら、サッサと降りろよ 僕は何度も後ろを振り返りながら「殺さないで」と連呼する兄を小突きながら山の奥の方へと歩かせます。よかった、兄が息を吹き返して。こんな山道兄を担いで歩くのは大変だったろうから。 ようし、このぐらいまで来たら大丈夫だ、見付かる心配もない、兄さん、死ぬといい。 最期まで「殺さないで」と云っていた兄の頭にスパナをめり込ませると兄はグムゥと云って倒れました。動かなくなった兄の身体をグィと爪先で蹴飛ばし、下り坂になった藪の中に転げ落とします。コレで見付かることもない。 僕は車に戻り、急発進させます。途中窓からスパナを放り投げ、鼻歌交じりで運転します。 ガツッ ガツッ ガツッ 車のトランクから物音、内側から力一杯殴りつける音 僕は車を路肩に停めると、トランクを開けてみました、兄が目を剥き出しに見開いて「お願い、殺さないで」と哀願しています。僕は急いでトランクの蓋をバタン閉めると、車を急発進させました。 何で生きてる、殺したのに、僕は車を更に走らせて、山の更に奥、ウネウネと続く山岳道路、ガードレールの向こうは岩が剥き出しの高い高い崖です、ソコに車を停めてトランクの中の兄を引きずり下ろしました。 相変わらず「殺さないで」と云う兄を力一杯押して崖から突き落とします。「ヒィ!」って云いながら落ちていきました。遥か下の方、兄が赤い染みになって見えます、これじゃ絶対助からない。 安心して車を発車します、今度は大丈夫、さっきのは何かの手違いなのだ ガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッ ガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッ ガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッ ガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッ ガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッ ガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッ ガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッ ガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッガツッ トランクの中から絶え間ない物音、内側から力一杯殴り続ける音です。 音は、とまりません。
by khem_mark
| 2003-05-28 01:54
| 双子の兄のこと
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||